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過去10年間の国際的な薬物政策について、国連全体の知見を整理した報告書の和訳を公表。大麻についても新しいアプローチのリスクと利点への研究を指摘

長年、国際的な薬物政策では、3つの国際条約を基盤とする薬物統制システムと、国連エイズ合同プログラムの現場の声としての人権擁護システムがお互いの目的のために矛盾した取組みをしていました。前者は懲罰的アプローチ、後者は公衆衛生アプローチと呼ばれています。

しかし、2001年以降、国連システム内の決議や政治宣言で、人権擁護と健康対策に焦点を当てた公衆衛生アプローチに変化してきました。2016年の世界薬物特別総会(UNGASS2016)の成果文書を踏まえ、2018年には、国連システム事務局長調整委員会(CEB)にて、「効果的な国連機関間の連携を通じた国際薬物統制政策の実施を支援する国連システム共通の立場」を全会一致で支持し、この年に初めて国連全体で、実質的に人権擁護と健康対策に焦点を当てた公衆衛生アプローチが薬物政策の中心となりました。

本レポートは、国連システム事務局長調整委員会(CEB)がタスクチーム(作業部会)を編成して、2019年3月14日から22日にかけてオーストリア・ウイーンで行われた第62回国連麻薬委員会(CND)の会合で発表されたものです。

日本臨床カンナビノイド学会(新垣実理事長)では、国際薬物政策の知見がわかる「過去10年間に私たちが学んだこと:国連の薬物関連制度によって得られ、生み出された知見の要約」の和訳を20年5月22日に当学会WEBサイトにて公表しました。本学会がテーマとするカンナビノイド及び大麻については、下記のように指摘しています。

「情報に基づいた政策決定を行うために必要な科学的根拠を生み出し、大麻に関連するものを含む薬物規制の新たなアプローチのリスクと利点をよりよく理解するためには、国際的な基準と最優良事例に基づいて、国、地域、世界レベルでのデータ収集、分析、研究に投資することが必要である。」付録 II 薬物関連事項に関する国連システムによって生み出され、得られた知見に基づく主要メッセージの概略より抜粋。

本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。


タイトル:
過去10年間に私たちが学んだこと:
国連の薬物関連制度によって得られ、生み出された知見の要約

発行元:国連システム事務局長調整委員会(CEB)
発行日:2019年3月

序章
1.はじめに

2.規制薬物のアクセス及び使いやすさを含む健康
2.1概要
女性の薬物使用
医療目的、特に疼痛治療のための規制薬物へのアクセス
健康に対する権利
2.2違法薬物使用及び薬物使用障害の防止並びに異なるレベル及び部門におけるより健康的な集団の促進
2.3. 薬物使用障害の治療、リハビリテーション、回復、社会復帰
2.4 薬物使用による健康への悪影響の最小化:HIV、ウイルス性肝炎、その他の血液感染症及び結核の予防、治療及びケア
2.5 刑務所における薬物使用、依存、注射、予防及び治療
予防と治療の費用対効果と投資収益率
汚名(スティグマ)と薬物政策の汚名は薬物対応の有効性に影響を及ぼす

3. 効果的な法執行と脆弱なコミュニティの保護
3.1 薬物犯罪の防止
3.2 薬物犯罪への対応
3.3 麻薬及び向精神薬の取引の防止
3.4 比例的かつ効果的な政策と対応(薬物使用の投獄と非犯罪化/非犯罪化       の代替に関する科学的証拠を含む)
3.5 刑事司法手続及び司法分野に関する法的保証及び保障措置(法的援助と公平な裁判を受ける権利を含む)
3.6 薬物取引と平和・安全保障との関連性への対応(マネーロンダリング、汚職、武力紛争、政治的脆弱性及び安定性)

4. 代替開発

5. 分野横断的 (又は局所的)な問題
5.1 新精神作用物質(NPS)
5.2 薬物の非医療使用
5.3 薬物関連の活動におけるインターネットの利用
5.4 社会的包摂
5.5 情報 (モニタリング、疫学、統計)

6. 国際的な薬物政策に関する条約及び決議

7. 最終見解

付録 I 効果的な国連機関間の連携を通じた国際薬物統制政策の実施を支援する国連システムの共通の立場
付録 II 薬物関連事項に関する国連システムによって生み出され、得られた知見に基づく主要メッセージの概略
付録 III 薬物関連に関する国連機関間の共同プログラムの例

和訳全文は、こちらのサイトのPDFファイルを参照下さい。
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=103532

国連システム
「国連システム」は、国連ファミリーに属する機関で構成される。それには国連事務局、国連の諸計画や基金、専門機関、その他の関連機関が含まれる。専門機関はそれぞれの特別協定によって国連に結びついており、経済社会理事会および/もしくは総会に報告する。

国連システム事務局長調整委員会
国連システム事務局長調整委員会(United Nations System Chief Executives Board for Coordination(CEB))は、国連システムの最高の調整機関である。事務総長が議長を務め、そのメンバーは国連の主要な機関のリーダーたちである。加盟国の共通の目標が達成できるように国連システムの活動を調整する。年に2回開かれ、その作業はハイレベル計画委員会とハイレベル管理委員会の支援を受ける。https://www.unsystem.org/
参加機関は下記の31機関。
国際連合(UN)、国連食糧農業機関(FAO)、国際原子力機関(IAEA)、国際民間航空機関(ICAO)、国際農業開発基金(IFAD)、国際労働機関(ILO)、国際通貨基金(IMF)、国際海事機関(IMO)、国際電気通信連合(ITU)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、国連人口基金(UNFPA)、国連人間居住計画(UN-HABITAT)、国連難民高等弁務官(UNHCR)、国連児童基金(UNICEF)、国連工業開発機関(UNIDO)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UN-Women)、世界観光機関(UNWTO)、万国郵便連合(UPU)、世界食糧計画(WFP)、世界保健機関(WHO)、世界知的所有権機関(WIPO)、世界気象機関(WMO)、世界銀行(World Bank)、世界貿易機関(WTO)、国連プロジェクトサービス事務局(UNOPS)、国際移住機関(IOM)

日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2019年7月段階で、正会員(医療従事者、研究者)67名、賛助法人会員12名、 賛助個人会員23名、合計102名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/