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赤ちゃん型ロボット「かまって『ひろちゃん』」の 触れ合い効果を介護施設で長期間検証する実験を開始

 

プレスリリース

報道関係 各位

 

株式会社国際電気通信基礎技術研究所とヴイストン株式会社が共同開発した赤ちゃん型ロボット「かまって『ひろちゃん』」(以下、「ひろちゃん」)との触れ合いが認知症高齢者(要介護者)とその介護者に及ぼす効果を検証する長期的な実験を、社会福祉法人隆生福祉会の介護施設「特別養護老人ホームゆめパラティース」で開始します。

要介護者が、赤ちゃんをあやす行為をひろちゃんで疑似体験することで、生きがい作りや癒しの効果があるか、介護者の負担を軽減できるか、長期間の運用実験を通して検証します。

今後は、この実験の状況を紹介したり、ひろちゃんを使った介護レクリエーションの方法を紹介する、Webサイト(ひろちゃんコミュニティサイト)を開設し、情報発信を行うとともに、コロナ禍で孤立しがちな高齢者施設の社会的な繋がりを支援していきます。

ひろちゃんのように要介護者に働きかけるロボットを「インタラクティブドール」と呼びます。このインタラクティブドールによるセラピー効果を検証することで、要介護者と介護者を支援する新たな産業分野「インタラクティブドールセラピー」分野の創出を狙います。

 

 

図 1 かまって「ひろちゃん」と、ひろちゃんを高齢者があやしている場面

概要

株式会社国際電気通信基礎技術研究所(以下「ATR」、京都府相楽郡精華町)とヴイストン株式会社(以下「ヴイストン」、大阪府大阪市)、社会福祉法人隆生福祉会(以下「隆生福祉会」、大阪府大阪市)、独立行政法人科学技術振興機構(以下「JST」、埼玉県川口市)は、ATRとヴイストンが共同開発した赤ちゃん型ロボット「かまって『ひろちゃん』」(以下、「ひろちゃん」)との触れ合いが認知症高齢者(要介護者)とその介護者に及ぼす効果を検証する長期的な実験(実験期間:2020年10月下旬より、6ヶ月を予定)を隆生福祉会の介護施設(介護施設名「特別養護老人ホームゆめパラティース」、兵庫県尼崎市下坂部3丁目3−1)で開始します。

ひろちゃんのように要介護者に働きかけるロボットを「インタラクティブドール」と呼びます。今回の実験を通して、コロナ禍で孤立しがちな高齢者施設の社会的な繋がりを支援する取り組みを行いつつ、今後は要介護者と介護者を支援する新たな産業分野「インタラクティブドールセラピー」分野の創出を狙います。なお、本研究はJST 戦略的創造推進事業(CREST) 研究領域「人間と情報環境の共生インタラクション基盤技術の創出と展開」(研究総括:間瀬健二 名古屋大学 教授)における研究課題「ソーシャルタッチの計算論的解明とロボットへの応用」 (研究代表者:塩見 昌裕 ATRインタラクション科学研究所 室長)の支援を受けて行います。

 

背景

コロナ禍により、触れ合いの機会が激減しています。特に介護施設では、介護者と要介護者の触れ合いが不可欠ですが、高齢者は重症化リスクが高く、消毒や飛沫防止など細心の注意が必要となり、これまでと異なる介護が求められています。要介護者、特に認知症高齢者は普段と違う雰囲気に不安を感じています。また、介護者側の負担も増加しています。介護の現場では、要介護者・介護者ともに癒やしが求められています。

このような状況において、介護施設では、コミュニケーションロボットによる癒やし効果が期待されています。しかし、ロボット自体が高価であるため、1つの施設が導入できるロボットの数は1体〜数体であり、要介護者は複数人で1台のロボットを共有することになります。これでは、コロナ禍においては、要介護者は感染リスクが高くなり、介護者にとっては感染リスク低減のための負担がさらに増えるなど、現実的ではありません。

 

今回の取り組み

そこで私たちは、要介護者1人に1台提供することを目指して、安価なロボット「かまって『ひろちゃん』」(図1)を開発しました。ひろちゃんは、石黒浩(大阪大学特別教授、ATRフェロー、ATR石黒浩特別研究所 所長)が提唱した人のミニマムデザイン*1のコンセプトをもとに、人間の赤ちゃんの存在感を伝えるロボットです*2。2020年1月から本体価格5,000円(税別)で販売を開始しました。この価格であれば、要介護者1人に1台ずつ提供することが現実的になり、ロボットを共有することによる新型コロナウィルスの感染を回避することができます。また、コロナ禍の影響により、介護施設では、現在、部外者の立ち入りを制限していることが多いのですが、ひろちゃんは、壊れにくく扱いやすいため、介護者のみによる介護現場での運用が可能です。

今回、私たちが10月下旬から開始する実験では、要介護者1人に1台のひろちゃんを提供し、長期間、実際の介護業務の中でひろちゃんを利用してもらいます。この実験を通じて、要介護者がひろちゃんと飽きずに長期間関わってくれるか、癒やしの効果があるか、また、要介護者とひろちゃんとの触れ合いの副次的な効果として、介護者の負担軽減の効果があるか、などを明らかにします。まずは1ヶ月、介護施設「ゆめパラティース」において要介護者10名程度を被験者とした予備実験を行い、その後、被験者数や施設数を増やして本格的な実験を行う予定です。

 

今後の展開

今後は、この実験の状況を紹介したり、ひろちゃんを使った介護レクリエーションの方法を紹介するWebサイト(ひろちゃんコミュニティサイト)を開設して情報発信を行うとともに、コロナ禍で孤立しがちな高齢者施設の社会的な繋がりを支援していきます。ひろちゃんの長期的な導入で得られるノウハウに基づく現場での運用マニュアルの作成や、ひろちゃんを効果的に利用するためのセミナーの開催など、ひろちゃん運用専門家の育成にも取り組みます。海外では要介護者への癒しに人形を使う取り組みを「ドールセラピー*3」と呼んでいます。私達は、ひろちゃんのように要介護者へ働きかけ(インタラクション)を行うロボットを「インタラクティブドール」と呼び、ひろちゃんを通して要介護者と介護者を支援する「インタラクティブドールセラピー」の創出を目指します。

 

*1:人の存在を感じるための最低限の要素のみで人工システムをデザインするアプローチ。これを用いて開発したロボットに「テレノイド®」、「エルフォイド®」、「ハグビー®」があります。

*2:ひろちゃんは、赤ちゃんサイズのぬいぐるみで、要介護者に好きな表情や顔を想像してもらうために、顔はありません。ひろちゃんの声は、赤ちゃんらしさを強く感じさせるために、1歳頃の人間の赤ちゃんの録音音声を使用しており、要介護者が揺らすなどの働きかけに対して、笑い声や泣き声、喃語(乳児が発する「あっあっ」や「ばぶー」のような意味のない発声)を発します。

*3:赤ちゃん人形を認知症高齢者に渡し、あやしてもらうことで、癒し効果をねらったセラピーの1つです。ドールセラピーで使用する人形は、基本的に声を出したりといった働きかけをしません。また、実際の赤ちゃんにそっくりの人形を用いることが多いです。

 

【研究支援】

本研究はJST 戦略的創造推進事業(CREST) 研究領域「人間と情報環境の共生インタラクション基盤技術の創出と展開」(研究総括:間瀬健二 名古屋大学 教授)における研究課題「ソーシャルタッチの計算論的解明とロボットへの応用」 (研究代表者:塩見 昌裕 ATRインタラクション科学研究所 室長)の支援を受けて行います。

 

 

 

 

■株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)について

本社:〒619-0288 京都府相楽郡精華町光台二丁目2番地2(けいはんな学研都市)

 代表者:代表取締役社長 浅見 徹(あさみ とおる)

 TEL:0774-95-1111

 URL:https://www.atr.jp/

 事業内容: 脳情報科学、深層インタラクション科学、無線通信などの情報通信分野と、生命科学に関する研究開発及び事業開発

 

■ヴイストン株式会社について

本社:〒555-0012 大阪府大阪市西淀川区御幣島 2-15-28

 代表者:代表取締役 大和 信夫 (やまと のぶお)

 TEL:06-4808-8701

 URL:https://www.vstone.co.jp

 事業内容:ロボット関連製品の開発・製造・販売

 

■社会福祉法人隆生福祉会について

本社:〒546-0013 大阪府大阪市東住吉区湯里1-3-22

 代表者:理事長 藤本 加代子 (ふじもと かよこ)

 TEL:06-6701-5820

 URL:https://smile-yume.com/

 事業内容:介護老人福祉施設、認知症対応型共同生活介護、短期入所生活介護、通所介護、訪問介護、訪問看護、居宅介護支援、大阪市認可保育園、大阪市委託事業 認知症強化型地域包括支援センター 等